コラム@ダックス

[0068] 判決の影響 (2005/02/20)


税法の取り扱いで今後、注意を要するケースということで

「贈与・相続により取得した資産を譲渡した場合の
         譲渡所得の取得費の取扱いについて」

という内容のファックスが税理士会支部より流れてきました。

このようなお知らせがくることは極めて珍しいことです。

これは、平成17年2月1日に最高裁判所で出された判決を
受けてのことです。

判決の要旨は、受贈者が贈与者から資産を取得するために
要した付随費用の額は、受贈者が同資産を譲渡した場合に
所得税法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額
の計算において、同法38条1項にいう
「資産の取得に要した金額」に当たるというもの。

父親からの贈与により取得したゴルフ会員権を贈与の際に
支払った名義書換料が「資産の取得に要した金額」になる
という判断が下されたものです。

資産を譲渡した場合の譲渡所得の計算は、簡単に言いますと
譲渡収入から「資産の取得に要した金額」(取得費)と譲渡
費用を差し引いたものが譲渡所得になります。

このため、資産の取得費は大きいほど税金は少なくて
すみます。

通常、取得費は引取運賃や運送保険料、購入手数料、
搬入費、据付費など取得する際にかかった費用をいい、
ゴルフ会員権などは名義書換手数料なども取得費とされます。

しかし、所得税法60条1項に規定されている贈与、相続、
低額譲渡により取得した資産を譲渡した場合には、
その2項において

「 〜 譲渡所得等の金額の計算においては、その者が
 当該資産をその取得の時における価額に相当する金額に
 より取得したものとみなす。」

として、贈与者等から引き継ぐ際の名義書換手数料のような
費用を取得費に入れて所得税の計算をすることは、
今までは認められていませんでした。

しかし、今回の最高裁判所の判決で、所得税法60条の
本旨は増加益に対する課税の繰延べであって、受贈者が贈与
者から資産を取得する際の付随費用は、「資産の取得に
要した金額」であるから、収入金額から控除されるべき性質
のものであるという判断をしたのです。

贈与や相続等により資産を取得した場合、最初の取得価額は
贈与者や相続人のものを引き継ぎますが(所得税法60条)、
「取得に要した金額」は38条が予定しているように
解釈しましょうよ、贈与や相続の際の名義変更料や登記費用
も取得費にいれてもいいですよ、ということでしょうか。


この取り扱いは、ゴルフ会員権に限ったことではなく、
不動産などの登記費用も含まれますから影響は大きいのでは
ないでしょうか。

国税庁では、ホームページでその事を告知していますし、
更正の請求なども受け付けるとしています。
(ただし、更正の期間制限の関係で5年分まで)

心当たりのある方は、再度確認することをお勧めします。

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