コラム@ダックス

[0057] 税務の週刊誌 (2004/08/29)


週間税務通信という週間雑誌をご存知ですか。
50ページ弱の薄い週間雑誌で、およそ一般の方は読んでいないだろうな
と思われる雑誌ですが、税務に関する情報を入手するには手頃なメディア
で、解説記事も載っているので読むようにしています。

その8月23日号に、気になる解説記事がありましたのでご紹介します。
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実務家のための法人税相談室
「子会社貸付金の貸倒損失の計上について」
質問の概要は、

A株式会社(代表 甲)は本業の傍ら飲食店を経営していたが、ある時期に
B株式会社(出資者 甲)を設立し飲食店はB社に引き継いだが営業不振で
毎期赤字になっていた。
A社はB社の資金不足を補うため、都度資金貸付を行い、累積貸付額は
1000万円にも達していた。
B社は、平成15年1月に解散決議をした。(清算決了はまだ)
そこで、A社はB社に対する貸付金1000万円を貸倒損失として計上
したいが、問題はあるか?

という質問です。

これに対して、元国税庁出身の税理士が次のように回答しています。
「1.初めに
 本件貸付は、A社からB社への貸付として処理されていますが、その
実質はA社から甲が借り受け、これをB社に貸付たという見方もできなくは
ありません。この考え方に立てば、B社への貸付金を否認して代表者甲への
貸付金という認定がなされ、B社への貸倒処理の問題は起こりません。
・・・しかしながら、・・・徴表事実としてA社からB社へとして処理されて
いるので、以下A社からB社への資金貸付として考えてみることにします。
・・・・・                              」

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この記事は、貸倒損失を計上する場合の要件などを分りやすく解説している
のですが、私が注目した点は「1.初めに」に書かれているように、
この国税庁出身の税理士の方が、実質的な部分に最初に着目して一つの
可能性を示している点です。

税務署の調査では、時として有効に成立している契約がある場合であっても
その取引の実質的な面をみて、別の取引であるとする主張がされる場合が
あります。これを「実質課税の原則」と言います。

この点は、会社を経営している方には特に憶えておいていただきたいことです。

もちろん、取引を偽装したり仮装することは「脱税」です。
例えば、この例の場合、本当はA社から甲への貸付で実際のお金の流れも
そうなっているのに、経理処理だけA社からB社への貸付としている場合
は、取引を偽って経理処理していることになり違法です。

ここで、言いたいのはそういう違法行為ではなく、正式な書類もあり、
経理処理もお金の流れどおりであったとしても、税務署的な視点で
「実質的にはどうなの?」という部分から税金をかけてくる場合がある
のです。

この部分は社長さんと話をしていても、なかなか理解していただけない
部分です。

「そんなこと言ったって、ちゃんと書類もあるんだし・・・」

しかし、本当にその書面だけで証明できますか。
その取引の合理性を証明できるのですか。

税務の難しい部分の一つです。
                         奥野達彦

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